私の娘に乳歯が顔を出してきました。
「虫歯にならないように歯磨きを頑張りましょう。」
歯科医院でよく聞く言葉です。
もちろん、それはとても大切なこと。
しかし、本当の意味での予防は、虫歯だけではありません。
私は歯科医師として、もっと多くの方に知っていただきたいことがあります。
それは、子どもの予防は"口腔機能"を育てることから始まるということです。
「食べる」「話す」「呼吸する」は、生まれつき上手ではない。
赤ちゃんは、生まれた瞬間から上手に噛めるわけでも、飲み込めるわけでもありません。
成長の中で少しずつ、
- しっかり噛めるようになる
- 正しく飲み込めるようになる
- 鼻で呼吸できるようになる
- 舌を正しい位置に保てるようになる
こうした機能を身につけていきます。
この成長が順調に進むことで、顎は適切に発育し、歯並びや噛み合わせも整いやすくなります。
歯並びは「結果」でしかない。
「歯並びが悪いから矯正をする。」
もちろん、それも一つの選択肢です。
しかし、その歯並びをつくった原因は何でしょうか。
口呼吸。
舌の位置。
飲み込み方。
柔らかい食事ばかりの生活。
こうした毎日の習慣が積み重なり、顎の成長や歯並びに影響を与えていることも少なくありません。
つまり、歯並びだけを見ていては、本当の予防にはならないのです。
予防は「治療しないこと」ではない。
多くの人は予防というと、「虫歯をつくらないこと」をイメージします。
しかし、本当の予防とは、将来困らないように、子どもの成長をサポートすること。
その中には、虫歯予防だけでなく、口の機能を育てることも含まれます。
だからこそ近年は、「口腔機能発達不全症」という考え方が広まり、お子さんの「噛む・飲み込む・話す・呼吸する」といった機能を早い段階から確認することの重要性が注目されています。
子どもの未来は、お口から変えられる。
大人になってから歯並びを治すことはできます。
しかし、子どもの成長そのものは、子どもの時期にしか育てることができません。
だから私は、虫歯があるかどうかだけではなく、その子がしっかり噛めているか、鼻で呼吸できているか、舌は正しい位置にあるかという視点を大切にしています。
歯科医院は、虫歯を削る場所ではありません。
子どもの未来を育てる場所でもあります。
本当の予防は、歯が悪くなってから始まるものではありません。
子どもの成長が始まったその日から、すでに始まっているのです。