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インプラントは「入れたら終わり」ではありません。

天然歯と同じように、インプラントの周囲にも炎症が起こることがあります。インプラント周囲の粘膜に炎症がとどまっている状態を「インプラント周囲粘膜炎」、炎症が進行してインプラントを支えている歯槽骨まで失われた状態を「インプラント周囲炎」といいます。

では、実際にインプラント周囲炎になってしまった場合、どうするのでしょうか。

重要になるのが、炎症の原因を取り除いたうえで、失われた骨を再建する「再建治療」です。

ただし、すべての骨欠損で同じように骨が再生するわけではありません。

インプラント周囲炎の再建治療 - 骨欠損の形態による再生の可能性

骨欠損の「形」が重要

インプラント周囲炎による骨欠損は、その形態によって再生の可能性が大きく変わります。

1. 4壁性骨内欠損

インプラントの周囲を骨壁が取り囲むように残っているタイプです。

欠損部が骨によって囲まれているため、再生材料や血餅を安定させやすく、再生治療に適した形態と考えられます。

このようなケースでは、大部分の骨再生が期待できる場合があります。

2. 1壁性裂開を伴う3壁性骨内欠損

基本的には3つの骨壁が残っているものの、一部に裂開が存在するタイプです。

4壁性と比較すると条件は厳しくなりますが、欠損部を囲む骨壁が多く残っているため、再建治療を検討しやすい形態です。

こちらも、大部分の骨再生が期待できるケースがあります。

3. 2壁性骨内欠損

骨壁が2つしか残っていないタイプです。

骨壁が少なくなることで、再生材料を安定させたり、治癒に必要な環境を維持したりすることが難しくなります。

そのため、再生治療を行っても、完全な骨再生ではなく、不完全な骨再生になる可能性があります。

4. 1壁性骨内欠損+歯槽骨縁上欠損

さらに骨壁が少なく、歯槽骨の頂部より上にも欠損が存在するタイプです。

骨による「囲い」が少ないため、再生治療の条件としてはさらに厳しくなります。

このようなケースでは、完全な骨再生を目指すことが難しく、不完全な骨再生となる可能性があります。

また、骨の支持が著しく乏しい場合や感染のコントロールが困難な場合には、インプラントの保存が難しく、インプラントの除去を検討することもあります。

つまり、インプラント周囲炎の再建治療では、「どれだけ骨がなくなったか」だけではなく、「どのような形で骨がなくなっているか」を見ることが非常に重要なのです。

まず重要なのが「デブライドメント」

再建治療を行ううえで、非常に重要になるのがデブライドメントです。

デブライドメントとは、簡単にいうと、炎症によって生じた不良な組織や、感染・汚染の原因となるものを取り除き、治癒できる環境を整える処置です。

インプラント周囲炎では、インプラントの周囲に炎症性の肉芽組織が存在したり、インプラント表面が細菌によって汚染されていたりします。

その状態のまま骨補填材などを入れても、良好な治癒を期待することはできません。

そのため、まずは炎症組織をしっかりと除去し、インプラント表面を適切に清掃・除染する必要があります。

これが「完全なデブライドメント」です。

再建治療では、単純に「骨を足す」ことが目的ではありません。

  1. 炎症組織を除去する
  2. インプラント表面を清掃・除染する
  3. 骨欠損の形態を整える
  4. 骨が再生しやすい環境をつくる
  5. 必要に応じて骨補填材などを用いて再建する

という流れが重要になります。

つまり、デブライドメントは再建治療の土台となる非常に重要な処置なのです。

ヒーリングアバットメントと完全閉創

再建治療後の治癒方法も重要なポイントです。

一つの方法として、ヒーリングアバットメントを装着した状態で治癒させる方法があります。

ヒーリングアバットメントとは、インプラント体に接続して使用する部品で、歯ぐきの形態を整え、インプラント周囲の軟組織を治癒させるために使用します。

一方で、再建した部位を粘膜で覆い、完全閉創して治癒させる方法もあります。

ここには重要な違いがあります。

一般的に、ヒーリングアバットメントを口腔内に露出させて治癒させる方法と比較すると、完全閉創したほうが骨再生に有利な環境をつくりやすく、骨再生率が高くなることが期待できます。

再生したい部位を粘膜で完全に覆うことで、再生材料や血餅を安定させ、外部からの刺激や細菌の影響を抑えながら治癒を待つことができるためです。

ただし、その分、治癒期間は長くなる傾向があります。

骨再生を優先するなら完全閉創。

治療期間や術後管理などを考慮する場合には、ヒーリングアバットメントを使用する方法も選択肢になる。

もちろん、すべての症例で同じ方法を選択するわけではありません。

骨欠損の形態、軟組織の状態、インプラントの位置、感染の程度、清掃性などを総合的に評価し、どちらの治癒方法が適しているのかを判断します。

インプラント周囲炎は「除去するしかない」とは限らない

インプラント周囲炎で骨が失われているのを見ると、「もうインプラントを除去するしかないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、すべてのケースでインプラントを撤去する必要があるわけではありません。

骨欠損の形態や炎症の程度、インプラントの状態などを詳しく診断し、保存・再建が可能なのか、それとも撤去が必要なのかを判断することが大切です。

特に4壁性や3壁性に近い形態では、再生治療によって大部分の骨再生が期待できるケースがあります。

一方、骨壁が少ない欠損では、完全な骨再生が難しい場合もあります。

特に4のような1壁性骨内欠損+歯槽骨縁上欠損では、再建が難しく、インプラントの支持を十分に回復できない場合があります。その場合には、インプラント除去も治療選択肢の一つになります。

だからこそ、インプラント周囲炎の治療では、単に「骨が何mmなくなった」という情報だけではなく、骨欠損がどのような形をしているのかを診断することが重要なのです。

そして、どのようなケースであっても、まず大切なのは徹底したデブライドメント。

汚染された状態をきれいにし、再生できる環境を整えたうえで、骨欠損の形態に合わせた再建方法を選択します。


インプラント治療は、入れて終わりではありません。

長期的にインプラントを維持するためには、毎日のセルフケアと定期的なメインテナンス、そして異常を早期に発見することが重要です。

インプラント周囲炎になったとしても、「除去」だけではなく、「残すために何ができるか」を考える。

そのために、骨欠損の形態を正確に診断し、完全なデブライドメントを行い、骨再生を最大限に引き出せる治癒環境をつくる。

インプラント周囲炎は、早期発見と適切な治療によって、インプラントを保存できる可能性があります。

インプラントを長く使い続けるためにも、定期的なメインテナンスを大切にしましょう。


廣神 崇史

院長

群馬県高崎市出身。2014年日本歯科大学生命歯学部卒業。大学病院での研修後、アメリカやドイツでインプラント研修を重ねる。ベトナムでのボランティア活動を通じて社会貢献にも取り組む。「ドクターひろかみん.」としてYouTube・TikTok・Xでも活動中。

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